医療コラム

■おせち料理の栄養って?

2012年12月20日
管理栄養士 中居有紀

 

2012年も残すところあと10日。
クリスマス、大晦日、お正月と、それぞれケーキ・チキンやそば、おせち料理などの季節の料理が食卓を彩る時期です。

今月の集団栄養指導では、年末年始の食生活についての抱負を皆さんにお尋ねしました。意外にも「うちは特に何もしません」と普段通りの生活を続けるという方も多かった反面、「家族・親戚みんなと食べるとつい食べ過ぎてしまうから、なるべく買いだめし過ぎずに小まめに買う」「次回の血液検査もオール正常値を狙う」と言った声から、「ケーキ屋の前を通らないことにする」といったユニークな意見まで聞くことが出来ました。

忘年会やパーティーも多く、環境によっては『規則正しい健康な食事』を続けるのが一番難しい季節。楽しいイベントや人付き合いのための集まりもたくさんあります。「周囲との付き合いがあるから、会食の誘いを断ったり、自分だけ人とは違う食事にすることなど出来ない…」という方も多くいて、これもよくわかりますが、大切なのは調整する気持ちを忘れないこと。「今日は楽しむ!その代り明日の朝とお昼は控えめに。」などの、前後での調整を忘れずにするのは、健康に行事を楽しむための大切なポイントの一つです。

さて少し早いですが、新年が明けるにあたり、今回はおせち料理の代表的な食材5つ(黒豆・昆布巻き・紅白かまぼこ・酢れんこん・菊花かぶ)について挙げてみました。言葉の縁担ぎでから食べられるようになったおせち料理の食材の魅力を、栄養的な視点から解説します。
 


■ 黒豆

いわれ:「まめに(元気に)働く」の言葉にかけて
黒豆、黒大豆は、植物性たんぱく質の宝庫。肉や乳製品などの動物性たんぱく質よりも、コレステロールや飽和脂肪酸が少なく、いわゆる『血液サラサラ』になりやすいタンパク質です。また動脈硬化予防の働きがある大豆サポニンや、女性ホルモン・自律神経のバランスを整える大豆イソフラボン、食物繊維も多く含まれます。

■ 昆布巻き

いわれ:「喜ぶ」の言葉にかけて
昆布は、それ自体が低カロリーなだけでなく、コレステロールを下げる働きのある水溶性食物繊維、アルギン酸やフコイダンが多く含まれています。また昆布巻きの中に入れるものといえば鮭やニシンが主流ですが、鮭には良質なタンパク質や疲労回復に働くビタミンB1、カルシウムの吸収を促すビタミンDなどが含まれています。ニシンも良質なタンパク質を含むほか、特に貧血改善に働くビタミンB12やビタミンDが豊富です。

■ 紅白蒲鉾

いわれ:「日の出」を象徴するかまぼこを、「めでたさ」の紅色と「神聖」の白色で頂く
かまぼこも、3切で40kcal程度と低カロリー食品です。低脂肪で、また栄養素の中では特にビタミンDとタンパク質が含まれています。

■ 酢れんこん

いわれ:「見通しがいい」の言葉にかけて
れんこんは、体内で炭水化物や脂質の代謝に関与する酵素の成分になったり、骨の形成を促したりするマンガンを多く含みます。また肌の弾力を整えるコラーゲンの合成を促したり、LDLコレステロールの酸化を防いで動脈硬化などの血管疾患を予防するビタミンCも含まれています。

■ 菊花かぶ

いわれ:かぶを国花である菊の花の形に切って、紅白に染めて長寿を願いながら頂く
アミラーゼなどの消化酵素を含みます。お正月のご馳走の箸休めにも向いています。
 


健康で明るい一年をおもって、おせち料理を楽しんでください。

今年もたくさんの患者さんと栄養指導の場でお会いしました。
特に集団指導の場では、参加してくださる方々が日に日に健康に自信をつけていかれる姿から、逆に管理栄養士としても教わることの多い一年となりました。

また来年が、皆様にとってよい年でありますよう心からお祈り申し上げます。

(№.28)

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